第5章 レイヴンscene2
「…いいよ…」
そんな顔して…
断れるわけないだろ…
「じゃあ…明日まで…」
「え?」
「明日の朝まで、傍に居て…?」
俺たちは一夜を過ごしたことはない。
いつも昼間から会って、どんなに遅くても深夜には家に帰ってる。
潤がいるから。
潤が待ってるから、俺を。
「ごめん…無理だよね…」
そう言うとうつむいてしまう。
ぽろっと一粒、涙がこぼれ落ちた。
「翔…」
「ごめん…聞かなかったことにして…」
そう言って翔はベッドから降りていこうとする。
俺はとっさに翔の手を引いた。
身体が倒れこんできて、ワインが俺のバスローブに溢れる。
「離せよっ…」
翔が顔を見られまいとして、俺の腕を振りほどこうとする。
「翔っ!」
その体を引き寄せて抱きしめた。
「やめ…て…期待、させないでよ…」
「翔…」
「いいから…雅紀はそのままでいいから…」
翔は俺の腕をゆっくり離すと、立ちあがった。
「タオルとってくる」
「待って。翔」
俺は立ちあがって、スマホを手にとった。
電話をかける。
「あ、潤?雅紀だけど」