第5章 レイヴンscene2
ホテルについても翔は起きなかったから、チェックインして鍵を預かって、車に迎えに行った。
今度は揺り起こした。
「翔、起きて?」
「ん…」
「ホテル、着いたよ?」
ここは横浜ロイヤルパークホテル。
翔がいつものとおりに予約した。
世間ではラグジュアリーホテルとか言われてるけど、結局俺達にとっては、ただのヤリ部屋。
でも、翔はいつもハイクラスなホテルを俺たちのヤリ部屋に選ぶ。
なにか特別な意味があるんだろう。
でも敢えてそれは聞かない。
翔が言わないから。
聞いてあげないんだ。
「雅紀…」
まだ車の中なのに、もう翔の目が潤んでくる。
この瞬間がたまらなく好きだ。
俺だけを求める翔が好きだ。
「もう…お部屋いってからにしようね…翔…」
耳元に口を寄せると、わざと息だけでささやく。
”好きだよ”
翔の身体がぶるっと震えると、涙が一筋こぼれ落ちる。
それを舐めとると、翔の手を取った。
お姫様みたいに車から降ろしてあげる。
「姫。行きましょうか…」
「…何言ってんだよ…バカ…」
「さ、エスコートします」
真面目な顔をして言うと、翔は破顔した。