第4章 灰紫
潤がシャワーを浴びて出て行く頃、翔ちゃんが目を覚ました。
俺は翔ちゃんの上半身を抱えてずっと、寝顔を眺めてた。
「翔ちゃん…?」
途端にぎょっとした顔をした。
「な…に…?」
夢だとでも思ったのか。
「身体…辛くない…?」
傷を抉るような問いかけだとはわかっていても、聞かずにはいられない。
「別に…」
そういうと、翔ちゃんはぷいと横を向いてしまう。
どうしていいかわからずにいると、翔ちゃんの身体が震えだした。
「う…ぅ…」
泣いてる。
シーツからはみ出た白い肩。
黒黒とした髪の毛。
視覚でも、肌でも、聴覚でも感じ取ることができた。
こんなわかりやすく俺の前で泣くなんて…
愛おしさがこみあげてきて、どうにもならなくなった。
「泣かないで…」
ぎゅっと抱きしめると、更に翔ちゃんは泣いた。
声をあげて、俺の腕にすがりつきながら。
俺はただ、ぎゅっと抱きしめているしかできなかった。
「智…ごめん…智…」
「いいから…気にしないで…」
それでも翔ちゃんの涙は止まらなくて。
その慟哭を、ただ為す術もなく見守るしかない自分が歯がゆかった。