第1章 しあわせはここにある-parallel-
ちょうど2週間たった。
その日は皆で大野さんの病室を訪ねた。
もう顔の腫れは引いていて、少しだけ痣が残ってる。
でも、ご飯を食べないからずっと点滴を打たれてて。
腕に打つところがなくなって、手の甲に針が刺さってる。
大野さんは俺達が行っても、相変わらず目を合わせない。
細かった腕が、また細くなってる。
ふっと、大野さんが俺の顔を見た。
「……?」
「どうしたの大野さん?」
「あれ?俺、なんでこんなとこにいるの?」
「…大野さん?」
「ここ、病院?なんで皆いるの?」
心底不思議そうな顔をしている。
「…どうしちゃったのよ…」
「え?なんで?俺、入院してるんだっけ?」
笑顔が、透き通っていた。
背筋に汗が伝った。
翔さんの顔をみたら、真っ青になっていた。
「記憶障害かも…」
あまりにもショックなことがあると、記憶がなくなってしまったり書き換えられてしまったりすることがある。
翔さんはそう言った。
潤が大野さんの両肩を掴んだ。
「大野さん!?俺のことわかる?」
「え…?潤だよね…?」
にこにこと笑った。
その笑顔はなんの疑いもない笑顔だった。