第4章 灰紫
いつの間にか、ロープが解けてた。
智くんは起き上がると、枕の下から何かを取り出した。
潤を乗り越えて、俺に向かってその何かを差し出して首筋に当てた。
ビリッとした衝撃が俺の脳髄を走っていった。
全てがスローモーションに見えた。
視界がブラックアウトした瞬間、俺は気づいた。
スタンガンだった。
翔ちゃんが後ろに倒れこむ。
潤が起き上がって、それを抱きとめた。
ぎゅうっと引き寄せると、俺と目を合わせた。
「ごめん…智…」
「ううん…ごめんね。すぐ、後ろ洗おう?」
「うん…シャワー借りるね」
「…行っておいで…」
翔ちゃんを俺に渡すと、潤はふらふらしながら風呂へ行った。
俺はぎゅっと翔ちゃんを抱きしめた。
「なんで…翔ちゃん…こんなことするの…」
わかってる。
不安でしょうがないんだよね…
なにがそんなに不安なの…?
俺、そんなに翔ちゃんを不安にさせてる…?
俺の何がいけないの…?
翔ちゃん…こんなに好きなのに…
顔を見てたら涙がまた、出てきた。
翔ちゃんの顔に、水がぽたぽた落ちる。
たくさん泣いたら、まるで翔ちゃんが泣いてるみたいになった。
それでも、俺の涙は止まらなかった。