第4章 灰紫
「智…」
ボトルを持ったままの智くんを抱き寄せた。
「翔ちゃん…?」
だめだ…
ぎゅっと抱きしめると、身体を離した。
「先に寝室行ってて…?」
「え…?うん…」
智くんが俺を振り返りながら、キッチンを出て行く。
身体が震えた。
殺してしまう…
いつか、智くんを殺してしまうかもしれない…
シンクに手をついて、息を整える。
しっかりしろ…
智くんの心は、俺にあるんだ。
じゃあ…
これからしようとしてることって、一体なんだ…?
俺は頭を振ると、寝室へ向かった。
もういい。
今日は、これから爛れた夜を送るんだ。
今は、ただそれに没頭しよう。
明日は俺もアイツも休みだ。
気が済むまで、智くんを攻め立てよう。
俺の手が、智くんを殺さないように。
寝室の前に立つと、心臓が高鳴った。
ねえ…
智くん。
今日は、楽しもうね?
ドアを引き開けると、智くんがベッドのうえで膝を抱えてた。
「翔ちゃん。大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「翔ちゃん…」
潤んだ目で俺を誘い込む。
さっきあれだけ貪ったのに、まだ俺を求めてくる。
そんなあなたが…
好きで堪らない。