第3章 萌葱-moegi-
「いたい…」
「大丈夫!?」
「ん。大丈夫」
包丁を持つ手が危なっかしい。
「ねえ…無理しないほうがいいんじゃないの?」
「大丈夫だからぁ」
乱れに乱れた後で、俺達は腹が減ってキッチンに立ってる。
ピザを食べ損なっている。
もうピザ屋は閉まってる時間。
簡単なものを作って食べようってことになったんだけど、魚以外切れない上に、さっき…
その…
すっごい責め立ててしまったから…
智の腰はかなり痛いはずで…
あぶなっかしい包丁さばきを、玉子焼きを作りながら、横目で見てた。
ブロッコリーを切るだけなんだけどな…
なんでこんなはじめてのおつかいみたいな気分になるんだろ…
ふるふるしながら、安定しないブロッコリーを切ってる。
「あって…」
ちょっと目を離したら、指を切ってた。
「ああっ…もうっ…」
慌てて智の指を口に入れた。
鉄の味が口に広がる。
入れたまま、玉子焼きをお皿にのせたら、絆創膏を取りに行った。
智はちょこちょこ指を咥えられたままついてくる。
リビングのソファに座らせたら、ティッシュでよく拭いて、絆創膏を貼った。
「もう、ここにいてね?」
「はぁーい…」