第3章 《言葉》
それは、とある日の出来事。
部室が清掃中だった為に、教室で着替えていた俺を見つけた、彼女から発せられた言葉。
因みにだが、「彼女」というのは「恋人」という意味であり、かれこれ2年半経つ俺達は色々済ませているので、今更上半身裸の所を見ても見られても動じないのである。
「京ちゃん京ちゃん」
恐らく、彼女も部活に行く途中だったのだろう。手には、ペンタブやらノートパソコンやら小さいキーボードが突っ込まれた籠を両手に抱えていた。
そのまま教室に入ってくる彼女。近くにあった机の上に籠を置いて、一呼吸ついた。
「はぁー、重たぁ」
「何、どうしたの」
よいしょ、と椅子に座る彼女にちらりと視線を送り、また着替えに戻る。
「いやぁ、特に用事があったわけではないんだけどね、京ちゃんが着替えてるのが廊下から見えたから、思わず、ね」
「俺以外に人が居たらどうするの…」
苦笑を浮かべて、浅く溜息をついてみる。
「ん?別に京ちゃんが目当てだから、他に男子が着替えてても気にしないけど?ていうか、他の男子の裸とか興味無いし」
…ひどくこざっぱりしてるー・・・
嬉しいような、満更でもないような、よく分からない気持ちになる。
「…それ、俺の裸には興味あるっていうこと?」
気持ちの行き場がないので、彼女にぶつけてみた。
「あぁ、そうだ、それ言いに来たの!あのね、京ちゃんって身体に綺麗に筋肉がついてるじゃない?」