第10章 邂逅
「うん、分かった」
美希はそう言うと初の部屋から退室した。
4月30日 午前9時 葬式場
初、拓実、小悟狼は葬式が始まる時間まで余裕があったので式場の外で話をしていた。
「土御門、例の箱は持ってきたよな?」
「勿論」
初はそう言いながら金の箱を小悟狼に手渡した。
「この箱を先生のバカ息子に渡すことになるが、調べ漏れとかはないか?」
「あぁ、可能な限り調べたぜ。昨日、お前に伝えたことが成果だ」
拓実は自信満々に答えた。
「プラス土御門に今日のことを伝え忘れることも成果だろう?」
小悟狼は鼻で笑いながら言った。すると拓実は笑って誤魔化した。
「それはさて置き、九条が言うには『妖蛆の秘密』の本だけが閲覧できなかった様だが、それについては明日の午前中に俺と九条が何とかする。そして午後に柏葉辻に向かう。土御門はそれに備えて準備をしておけ」
「了解した。それと、これは家で偶々気が付いたことなんだが・・・」
「それで気が付いたこととは?」
「藤田は金の箱の翻訳を知っているか?」
「九条から聞いてメモした。英知を求める者とか書いてあるやつだろう?」
初は頷き言葉を続けた。
「その翻訳に出てくる人物は六人。英知を求める者は二か所に登場するから一か所を省く計算になるからな」
「あぁ・・・」
「拓、先生たちのメンバーは全員で何人か分るよな?」
「勿論だ、日記の要点を纏めたのは俺だからな。え~と」
拓実は自分の手帳を取り出し開いた。
「六人だ。ん?六・・・」
「そう。オレが偶然に気が付いたのは翻訳に出てくる人数と先生たちのメンバーの人数が一致していることだ」
初が結論を言うと場の空気が変わった。
「ほう。つまり、土御門は先生の依頼を達成するには六人が必要だと考えているな」
「あぁ、その通りだ。どうしても偶然の一致だとは思えなくてさ」
「なら、依頼は達成できたと同然だぜ」
拓実の言葉に初と小悟狼は首を傾げた。
「六人が必要なんだろう?なら、もう揃っているじゃん。初の三兄弟、俺、藤田、そして万事屋」
「ほう、万事屋もか・・・。確認だが、覚悟はできているのか?」
「それは昨日の時点で確認済みさ」
拓実の言葉を聞き小悟狼は頷いた。
「明日、午後2時に土御門神社に集合。そして、全員で柏葉辻を目指す」
小悟狼の言葉に二人は頷いた。