第9章 図書館にて
初は苦笑しながら言った。
「手元にある物が古代の遺物だと誰もが予想していなかったことですからね」
アルトリアの言葉にネロも頷いた。そして初は資料本を読み進めた。棺の形をした金の箱は神々がノフルウ=カに与えたものだとされていて、中にはノフルウ=カが自分に奉仕させるために呼び出すことのできる霊が入っているのだそうだ。実際に棺の中に入っているのは、中に昆虫が入っている、磨いていない琥珀の塊だということである。
「琥珀・・・。拓が纏めた紙にも書いてあったな、鮎川が五芒星の中央に置いていたが」
「恐らく召喚の触媒にしたのでは?」
「と、なると・・・召喚したものは昆虫に相当する何か、か・・・。いや、霊が入っておるのに昆虫?・・・えぇい、頭痛がするではないか!!」
「まだ、そこまでは考えなくていいよ、ネロ。取り合えず読み進めよう」
金の箱は、長い間イギリスのある貴族が所有していたが、1968年に館に泥棒が入って盗まれ、それ以来行方がわからなくなっているようだ。
「・・・!?アルトリア、ネロ、これを見てくれ」
「どうしましたか、初」
「一体どうしたのだ?」
アルトリアとネロは初が指を指した箇所をみた。
「英知を求める者、ヨーグ・セシースの奉仕者(息子)、水の民(奴隷)を連れてくる者、ナール=ロス=ホテップの霊を持つ者、トートの子供、英知を求めるもの」
「初、まさかとは思いますがこの文は・・・」
「箱の装飾に用いられている象形文字の翻訳だ」
「でかしたな、初よ。見事である!!」
「ありがとう。意味はまだ、分からないけどね」
「それでも十分な戦果と言えます。箱のふたの裏側に彫られている文字についての詳細はありましたか?」
アルトリアが聞くと初は眉間に皺をよせた。
「それが・・・箱のふたの裏側に文字が刻まれていることは書いてあるが、文字の説明や解釈が書かれていない」
「何と・・・」
「そんな顔をするな、ネロ。一応、戦果は得た。あとは皆のところに行って情報交換だ」
午後2時 東京大学総合図書館 歩・マシュ・モードレッド
「俺たちは1974年3月の新聞を見つけ出し、その中から兄貴の先生たちが書かれている記述を探すぞ」
「日付が分からねぇんだろ?見つけるのに一苦労だ」
「それに複数の新聞社がありますからね。手分けをしないといけませんね」