第9章 図書館にて
初の言葉にマシュと歩は目を細めた。拓実は黙って頷いていた。
「儀式中ってことは・・・事故でも起きたのでしょうか?それとも」
「まさか、先生たちが殺した・・・?」
「それはないよ、歩。ある意味マシュが言っていた事故に近いかもしれないな」
「それはどういう意味ですか?」
「簡単に言うとこの儀式は召喚の儀式なのさ。召喚には成功したが先生の仲間の一人が、召喚された者によって殺されたんだ」
「召喚!?それは我々サーヴァントの召喚と同様な物ですか?」
「いいや・・・」
初は短く言い首を横に振り一息置いた。そして皮肉そうな笑みを浮かべ口を開いた。
「サーヴァントの召喚なんて可愛いものさ」
「兄貴、紙を見せろ」
歩は初から強引に紙を奪い目を通した。読んでいく内に自分の目を疑った。歩の異変に気が付いたモードレッドは立ち上がり同様に紙を目を通した。
「何だよ、これ・・・。ファンタジーの世界じゃあるまいし!!馬鹿馬鹿しい。妄想じゃねぇのか!?」
「落ち着けモードレッド!!兄貴の先生が現実でもないことを書く筈はない!!」
「なら、このバケモンのことはどう説明するんだよ、歩」
「信じたくはないが巷で噂になっているクトゥルフ神話の化け物じゃないのか」
歩が口にしたクトゥルフ神話という単語を聞いた皆は動きを止めた。
「その・・・非常に言いにくいことなのですが、初先輩の先生が召喚したのはクトゥルフ神話の化け物・・・ということですか?」
「はっ、そんなのはありえねぇよ!!妖怪の見間違えじゃねぇのか!?」
歩は頷いていたがモードレッドは納得していないようだった。しかも興奮状態になっていた。
「俺だってありえねぇことだと信じたい、だが・・・家に伝わる妖怪の記録のどれとも一致しない」
「モードレッド、確かに納得できないのはオレも同じだ。だが、冷静に考えてみると、腑に落ちない点がある」
「腑に落ちない?何だそれは・・・」
初の冷静な言葉にモードレッドは少しは落ち着きを取り戻した。
「妖怪は召喚出来ない。それはモードレッド自身も分るだろう?そして、一番腑に落ちないのは・・・何故今になって豊橋先生はオレたちに、この相談を持ち掛けた?上手く説明は出来ないが、これだけは分かる。何十年も先生は最期の時までこのことを覚えていた。それほど重要なことだと」