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Fate/Fantasy Of Cthulhu

第7章 調査


鮎川 稔が楽しげに刻んだあの時、われわれがそれを面白がって見ていたあの時、あの時がもう遠い遠い昔のように感じられる。

「何だよこれ・・・本当に化け物が」
拓実は恐怖を感じ身震いをした。
恐怖に打ち勝とうと自分の頬を叩き気合いを入れ直し次のページを目に通し要点を纏めた。
・「暗黒の兄弟」に属していた者たちの名前と、彼らが死んだ日の日付である。全部同じ筆跡で書かれているが、書いた時期は違うらしく、インクの色はまちまちである。
武川 雄介、1974年3月
吉野 優、1974年8月
鮎川 稔、1975年8月
浅野 一輝、2003年1月
鈴木 誠治、2012年3月
豊橋 昇ーーー
・鮎川 稔の死亡が記録されているページのすぐあとに、1975年8月付けの新聞の切り抜きが張り付けてある。

利根川の殺人事件
千葉県柏市在住の鮎川 稔氏の遺体が今朝早く利根川の土手沿いの近くで発見された。殺人によるものとみられる鮎川氏の遺体は、当地で昨夜鮎川氏を見かけたという目撃者によって確認された。物盗りが目的であることは明らかながら、警察の記録によれば、犠牲者は舌を切り取られていたということである。鮎川 稔氏は今週の始めごろ警察を訪れ、誰かに尾行されているらしいこと、生命の危険を感じると訴え出ていた。彼は、尾行者がエジプト製の工芸品を奪おうとしているのだが、自分はもうその品物は持っていないと述べていた。

(藤田があの時、考えていたことが分かったぞ。で、ここに出てくるエジプト製の工芸品が・・・初が写真を撮っていた物だな)
拓実が、そんなことを思いながら次のページをめくった。
このページが最後だった。

私は私と私の仲間たちがこの片田舎へ解き放した「もの」を心から恐れている。今までのところは悪い結果はまだ現れていないが、私の死によって束縛が解かれ、生き物は自由になるだろう。あれに殺されるであろう数多くの生命と霊が、すでに私の良心の上に重くのしかかっている。あれをこの世から追い出すために必要な物は、まだあの呪われた家の中に置いてある。鮎川 稔があの恐ろしい『妖蛆の秘密』から翻訳したあの文句だ。私はもう、弱ってしまって、その役目を果たすことができないが、私はそれをやってくれる人たちを知っている。あの人たちが私を見捨てた場合には、ああ神よ、我が魂に慈悲を与え給え。
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