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Fate/Fantasy Of Cthulhu

第7章 調査


1974年3月

われわれは稔の指示に従って儀式を開始した。稔の指示は、彼が持っている『妖蛆の秘密』という本に書かれていることに従ったものだ。囲炉裏に火をおこして、床にチョークで適切な記号をつけながら五芒星形を描いた。五芒星形の中央に、霊が閉じ込められている琥珀を置き、そのそばに2本の黒い蝋燭を立てて琥珀を照らすようにした。みんなはその周りに輪になって座ったが、私は「見張り」に指名されていたから、部屋の奥隅の床に座っていた。悪意ある霊が入ってこないように見張る役目だ。
稔は一握りの粉を囲炉裏の中へ投げ込んだ。すると邪悪の臭いのする煙が立ち上がり、炎は小さくなって緑色と茶色にパチパチと燻るような感じになった。座っている者たちは詠唱を始めた。鮎川 稔が本から写し取って発音できるように書きあらためたラテン語の詠唱である。
約2時間近く経ったころ、私は琥珀から一筋の煙が立ち上がるのを見た。琥珀の表面は泡立っているように見え、溶けかかってきているように見えた。これだろうか?とうとう成功したのだろうか?何か形らしきものが見えたーーー。
その次の日だった。われわれは計画をすべてやめることにしていた。そして昨夜起こったことは二度と口にしないという約束をかわし合っていた。雄介の死について、それから優がある種の狂気の様相を示したことについては、何とか説明をすることができた。平助はバイクの事故だというわれわれの説明を受け入れた。われわれがうまく工作したのだ。雄介はバイクから落ちるときに首の骨を折ったのだとわれわれは平助に言った。また優については、バイクが転倒したときに、岩で頭を打ったのだと説明した。本当にそれだけのことならよかったのだがーーー。残りの者たちは、昨夜経験したことによって、永久的に変わってしまった。
五芒星形の真ん中で形成された「もの」は不定形でほとんど不可視のものだった。それが発した恐ろしい声によって、われわれは気がついてもよかったはずのだが、われわれは愚かだった。そいつは話した。すると稔があの忌ま忌ましい粉ーーー《イブン=グバジの粉》とか呼んでいた粉ーーーをそいつに振りかけた。われわれがそいつをはっきりと見たのは、その時だった。
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