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Fate/Fantasy Of Cthulhu

第3章 春という季節


「えっ・・・?何かの間違いないじゃないんですか?冗談は止して下さいよ~」
初はおどけるが女性の顔は真剣そのものだった。
「お前にはオレが冗談を言える人間に見えるか?」
「見えない・・・ですね。初対面なので良く分かりませんが」
「だろう?だからさ、大人しく殺されてくれ。一瞬で終わらせるからさ、痛みなんて感じないさ」
(相手は本気だ・・・。此処で殺される訳にはいかない。オレには帰らなければいけない家がある!どうすれば・・・。うん?そうだ、あの手なら・・・一か八か賭けてみるか)
「相談ですけど、どうせ死ぬのなら最期に貴女に見てもらいたいものがあるんですけど」
「何だよ、それで満足するならオレは構わないよ」
女性は初の提案に乗ってくれた。
「手品を見てもらいたいと思います」
「ほう?面白そうだな」
「この手品は何も無い左手から何かを出します。最初に、左手にタネも仕掛けも無いことを触って確認してくれないでしょうか?」
「あぁ、いいぜ」
女性は初の左手に触れ確認した。
「何もないな、普通の左手だ」
「ありがとうございます。その左手を強く握ります。そして右手で指を鳴らします。すると・・・」
初が指を鳴らし左手を開くと勢い良く炎が飛び出した。
それには女性も驚いて後ろに飛び退いた。
その隙に初は逃げ出した。
足には自信はないが知っている道なので相手を撒くには、どういうルートがいいのか自然と頭の中に入ってきた。
初は頭に入ってきたルートの通りに逃げ、しばらく身を潜めることにした。
「ここまで来れば、安・・・し・・・ん」
初の言葉が続かなかった。
今起きている状況に頭が追いつかなかった。
目の前に、女性が立っていた。
女性が立っているのは、初から見て進行方向であり、目の前に立つのには回り道をするか初を追い抜く方法しかない。
しかしどちらも不可能である。
回り道をするにしても、今いる所まで着くとしたらかなり時間を費やすことになる。
「嘘だろう・・・。一体どうやって?」
「オレがお前の前に立っていることが理解出来ないって顔だな。そんなことよりも、さっきの奴は油断したよ。まさか、お前みたいな優男が不意を突いてくるとはな・・・とんだ誤算だよ」
女性は自嘲しながら言い、ゆっくりと初に近づいてきた。
女性の手にはナイフが握られていた。
初は蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。
(悪い冗談だ・・・)
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