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Fate/Fantasy Of Cthulhu

第10章 邂逅


「・・・!?」

(こいつは何者だ。だが、思った通りだ。金の箱を狙った連中は鮎川殺しの犯人か)

「貴様がどこまで知っているのかは知らんが、重要人物を殺害した罪で捕まえさせてもらうぞ」

小悟狼は静かに抜刀し構えた。それを見て男は背中に背負っている大鎌に手をかけた。一触即発の状態だったが沖田が小悟狼を制した。

「藤田さん、私にお任せを。あの者は人の形をした別の何かです」

「・・・。分かった、沖田くんに任せよう。捕らえるのが目的だが抵抗する場合は斬っても構わん」

「承知」

そう言った瞬間、沖田は男の懐に飛び込んでいた。普通の人や妖怪なら反応できない速度だが、男は沖田の刀を受け止めていた。

「・・・!?やりますね」

沖田は自身の刀を受け止められて驚いたが低めの声で男を称賛した。しかし男は一切の反応を見せなかった。沖田は何度も斬りかかっているが男は防ぐ一方だった。沖田は一旦男から離れ体制を立て直した。そして男を観察した。男はその場から動かずにいた。

(気のせいでしょうか・・・。斬りつける度にあの者の力が弱まっています。一切攻撃を受けていないのに・・・!?)

沖田はハッとすると男を見た。男は右手で自身の左腕を庇っていた。その部分から赤く血が滲んでいるのが見えた。

(あの者は私と斬りあう前は一切の返り血を浴びてはおらず負傷もしていない筈。なのに何故?ですが・・・あの者が弱まっているのは出血と関係があります。これは・・・チャンスですね)

長い沈黙が空間を包んでいたが、それを破ったのは意外にも男だった。

「お前たちの勝ちだ・・・箱は返す。そして明日、忌まわしき者を追い返せ。さらばだ・・・」

逃げる男を捕えようと小悟狼は沖田に指示を出そうとするが男は一瞬にして消えた。

「チッ・・・逃げられたか。怪我はないか、沖田くん」

「えぇ。大丈夫ですよ、藤田さん。取り逃がしてしまい申し訳ありません」

「いや、謝らないでいい。それより刀を交えて感じたことはあるか?」

「そうですね・・・」

沖田は天井を見上げ思い出すように言葉を続けた。

「見た目は異様な恰好ですが・・・一応、人間です。まぁ、普通の人間ではないのですが・・・」

「人間なのに人間ではない?」

「昼間にお会いした式さんと同じってことですよ」

「なるほどな」

小悟狼は頷きタバコを吸い始めた。
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