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世界は恋に満ちている。

第1章 一緒に帰ろう。


「くりちゃんっここどうやるの?」
PC教室で、パソコンのキーボードを打っていたひなの手が止まった。
近くにいたくりちゃん先生を呼び出すと、先生は、はいはい、とでも言うように来た。
「どこわかんないの?」
優しい、声音で聞かれる。
………あぁ、好き。
「ここの所、どうやるかわからない」
赤くなった顔を見られないように少しうつむきながら話す。
すると、ふわっと、先生の匂いが鼻をくすぐった。
驚いて顔を上げると、自分から見て右側にあるマウスに左から来た先生が手を伸ばしていた。
「ここはこうしてー、こうしてーこうなったらこう!」
頭がパニックで、説明されてもわからないままさらに顔を赤らめながら「ありがとう」と上ずった声でお礼を言った。
…ただ、こうやって質問することでしか先生と接せられない、
もどかしい距離。
こんなにも近いのに、遠くて、遠くて。
「いえいえ、どういたしまして」
にっ、と笑った先生は、次に呼んだ生徒の所へ行ってしまった。
どうにもならないこの距離が、今はただ辛い。
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