第2章 桜の木が恋をした。
〜サクラノキside〜
僕はいつも、ここにいる。
ここで長年、みんなを見守ってきた。
そんなある日のことだった。
1人の女の子が僕を見た。いつも通学でここを通る高校生の女の子だ。
さくらの小さな花が満開に咲くころだったからそれを眺めたのかもしれない。
でも、その女の子は僕を見て微笑んだ。
まるで、「綺麗だよ」って言ってくれたみたいだった。
その笑顔に僕は…惚れた。
向こうで友達が呼んでいる。
「さくら!」
…僕と同じ名前。
なぜかそれだけで胸が弾んだ。嬉しかった。
「はーい!」
…この女の子に、恋をした。