第6章 Umbrella【6】
「ねえ。2年生の縁下先輩と先輩って付き合ってるってまじ?」
「マジっぽいよ。いつも二人で登下校してるし」
「まじかよ……。私、縁下先輩狙ってたんだけどな……」
はぁ、とため息をこぼす女子生徒の声が聞こえた。
別に盗み聞きするつもりはなかった。
自分の名前が出たから、思わず足をとめてしまったのだ。
最近、彼女と付き合っているという噂が絶えない。
西谷や田中、木下や成田にも今朝質問攻めされたばかりだ。
いや、彼らだけじゃな3年生の先輩方にも。
でも、俺達は付き合っていない。
お互いにお互いのことを"好き"だということはわかっている。
はたから見れば「両想いなのだから付き合う」のが普通なのだろう。
だけど俺達はそうはしなかった。
俺も彼女もそう望んだから。
2ヶ月前。
あの日。
彼女が俺に告白をしてきた日の帰り道。
二人肩を並べて帰る。
いつものこと。
だけど違うのは、お互いの両の手が繋がれているということ。
隣を見れば、ニコニコと笑うの姿。
彼女が笑っているだけで、俺も嬉しく思う。
「じゃあ、また明日」
「また、明日」
手を振って別れる。
そんな毎日がこれからも続くんだと思った。
これからも続けばいいと思った。
なのになぜ、こんなにも……。