第4章 Umbrella【4】
「そう言えばGWの時えんのしたクンに会ったよ、たぶん」
GWが随分前に終わった頃、学校から帰っている最中隣を歩くに言った。
本当はすぐにでも言おうと思っていたが、GW明けのテストや部活などに時間を取られそのことを忘れていた。
何かの拍子に今ストンと思い出したため彼女に話したのだ。
俺の隣を歩いていたのにいつの間にか止まっていたらしい。
数歩後ろにいる彼女をみるために振り返った。
彼女は目を見開いて驚いていた。
そして小さな声で俺に問いかける。
「縁下くんて、縁下くん?」
「たぶんそのえんのしたクンだと思うぜ。本人かはわからないけど」
「……元気そうだった?」
「見た感じ元気だったと思うけど」
「そっか……。よかった……」
嬉しそうに笑う。
今にも泣き出しそうなだけどどこか安心したようなそんな笑顔を初めてみた。
そんな顔して笑えるんだな、お前。
「好きなの?」
気付いたらそう聞いていた。
「好きって?誰が?」
「お前が」
「誰を?」
「そのえんのしたって奴」
「……好きなの?」
「それを聞いてんの」
すごくイラついているのがわかる。
この場に研磨がいなくてよかった。
ゲームの新作届いてるかもしれないと先に帰ってしまったが今は好都合。
こんな姿見せられない。
「黒尾くん、怒ってる?」
「怒ってねえよ。ただ……なんでもねえ」
間違いなく嫉妬した。
そして八つ当たりも。
こいつは悪くない。
「好きだ」
今日はなんて自制が聞かない日なんだ。
本当に研磨がいなくてよかった。
俺はの唇に自分の唇を押し付けていた。
ゆっくりと離せば何が起きたかわからないというようなそんな顔で俺を見ていた。
「く、ろおくん……?」
「俺はのことが好きなんだよ」
「…………」
「じゃあ、また明日な」
次の日。
俺と彼女の間には大きな壁ができた。
と言っても一方的に俺が避けているだけ。
あんなことをした以上、どういう顔をして彼女に会えばいいのかわからなかった。
自分勝手と言われても何も言い返せない。
と距離を置いて一週間。
彼女は転校した。
Umbrella【4】終