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Umbrella【縁下 力】

第2章 Umbrella【2】





中学3年9月。
今日は今朝から雨が降っていた。
鼻歌を歌いながら登校している途中、傘も差さずに両手を広げてくるくると回っている女の子を見つけた。
見たことがない制服を着ていたからここらへんの生徒ではないのだろう。

彼女は周りの目なんて気にならないのか、スカートの裾を揺らしながら笑っている。
変な奴だな、なんてこのときの俺はそう言う風にしか思っていなかった。
学校へ行けば、ざわざわとクラスの連中が騒いでいる。
どうやらこの学校に転校生がやってくるようだ。
ひとつ下の学年らしいが、転校生となると学年問わずそわそわするらしい。
俺はクラスの声をBGMにしながら窓の外を眺めた。

放課後。
俺は部室で制服からジャージに着替える。
隣にいる幼馴染の研磨もゆっくりではあるが着替えはじめている。
そんな彼に俺は今日の転校生のことを聞いた。

「そう言えば、転校生来たんだってな」
「あー、うん。俺のクラス」
「へえ、どんな子?」
「なんか変わってる。濡れて来たし」
「濡れて?」

どうやら転校生は制服を濡らして登校してきたらしい。
そして今朝見たあの子のことを思いだす。
そうか、あの子が転校生か。
一人納得したところで俺は部活へと向かった。

部活が終わる7時ごろ。
外はすっかり暗くなっている。
雨はやむ気配がない。
研磨はゲームをしているから必然的に傘は俺が持つことになる。
帰り道を歩いていると、街灯の下しゃがみ込んでいる女の子を見つけた。
転校生だ。

何をしているのかと少し遠巻きに見る。
彼女は何をするわけでもなく、ただただ足元の水たまりを見つめて、くるりと指で水たまりをなぞる。
ふと、空中を見上げたかと思うと何かを掴み口の中に入れる。
なるほど。
これは随分と変わった子だ。

「クロ、行こう」

ゲームをしていた研磨もまた彼女の存在に気が付いたらしい。
関わるのがめんどいと言った顔で俺を見る研磨。
確かにかかわるのはめんどくさい。
再び歩き出して、彼女の傍を素通りした。

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