【R18 ハイキュー!!】幼なじみ 赤葦京治との場合
第5章 本当の気持ちは森の中に隠せ
「あの、この前の、お友達からってお話ですけど……」
「俺さ、悩みがないことが悩みなんだよな」
ゴクリと冷やし甘酒を飲んだ木兎先輩にいきなり出鼻をくじかれる。
「は……い……?」
「だから、悩みがないことが悩み」
「はぁ……でも、悩みがないのはいいことなんじゃ……?」
「みんないろいろ悩んでんじゃん。そういうの聞いてるとすげぇ羨ましい。なんかすげぇ頭良く聞こえるじゃん「悩んでる」って」
「そう、ですか?」
悩みなんてない方がいいと思うけど。
「だから俺は君のこと好きになって、すげぇ悩んで、俺すごいって思った」
「………」
「でもさ、……やっぱり悩むのはヤダって思った。好きな子が、他のヤツ好きで、それがわかっちゃって悩むとかって、ガチへこむじゃん」
「……木兎さん」
知ってたんだ、この人……
「あの、私、」
「あー、言わなくていいから。わかってるから」
大きな手を広げて私の口を塞ぐマネをした木兎さんは、ちょっとバツが悪そうに私を見る。
「ごめんなさい」
素直に頭を下げた。
いい人だから辛い。
でも、言わなくちゃいけないことは言った方がいい。
「友達からって言っても、ただ待たせるだけになってしまうと思うから……」
「そんなに赤葦のことがいいんだ?」
「はい」
「でもあいつ、あんまり気が付いてないかもよ? そういうこと目ざとくなさそうだしさ。こう、なんつうの、すごくできるのに、びっくりするぐらい自己評価低いし」
「……いうつもりないから、いいんです」
「えええええ??? 言わないの? なんで?」
京治が私を好きじゃないなら、言っても意味がない。
もし万が一……0.000001%ぐらいの確率で、好きでいてくれたとしても、受け入れてもらえなきゃ、結局は同じ。
そして京治が受け入れてくれるなんて、可能性、絶対ない。
それはこの1年、イヤと言うほどわかってる。
だったら、……もう何も言わない。
ただ、他人になるしかない。