第22章 夢と現実
『うっ…銀さ……私っ…もう会えないかと…思った…っ!』
天音は嗚咽で言葉を詰まらせながらも思いを全て吐き出した。天音が泣けば泣くほど銀時の腕の力は増していき、天音もいつの間にか銀時の背中二腕を回し着物に濃い皺が残るほど握り締めていた。
銀時「泣きたいのは俺の方だってんだ馬鹿野郎…。すまねぇ、守ってやれなくて…。」
『うぇっ…あれは銀さんが…ぐすっ、悪いんじゃなっ…うぇぇ…』
銀時「…とりあえず落ち着いてから話せ。」
泣き止まない天音を落ち着くまでそのまま抱き締め続けていた。それまでずっと銀時は目を瞑ったまま、天音の存在を確かめるように腕の力を一切緩めることは無かった。
しばらくして天音は落ち着き、背中に回っていた手も離れ銀時と手は天音の頭へと置かれていた。
『ごめんなさい、銀さんの服鼻水だらけにしちゃいました…。』
銀時「許さねぇ。」
『えっ。』
盛大に泣きわめいた天音により、銀時の服は涙か鼻水か、もう何で濡れたか分からないほど水分を含んでいた。天音は申し訳無さそうに謝ったが、予想外の銀時の返答に戸惑った。そしてそんな様子を見て銀時は意味有り気に笑い口を開く。
銀時「ひとつ我が儘聞いてくれたら許してやんよ。」
『なんなりと!!こんな身体でも私に出来ることなら何でもしますよ!!』
銀時「ふっ…そうかい、じゃ、お言葉に甘えて。」
そう言うと銀時はおもむろに立ち上がり天音が寝ているベッドへと侵入する。
『あっ、ちょっと銀さんこんな所に二人で寝たら落っこちちゃいます!』
銀時「こうすれば落ちねぇよ。おやすみ…。」
一人用のベッドで二人で寝るという窮屈な状態をものともせず、銀時は背中の傷に細心の注意を払い天音を抱き寄せた。精神的にも身体的にも疲れきっていた銀時は天音に有無も言わさず眠りに着いた。
『………銀さんありがとうございます。おやすみなさい。』
天音は心底幸せに満ちた笑みを浮かべ、銀時の後を追うように意識を手放した。