第21章 それぞれが負う傷
天音side…
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あれ、何だろう、すごく気持ちいい。
これはまるで…
『………う、羽毛布団!!!ってあれ?』
なんとも危機感の無い自分の寝言で眠りから覚めた私。寝起きでいまいち状況を理解出来て居なかったが、徐々に記憶を鮮明に思い出し血の気が引いていくのが分かった。私が居る部屋は薄暗く、明かりは小さな小窓から漏れる太陽の光のみだった。そして何処かも分からないこの場所で無闇に動けない私は一人、布団に蹲っていた。
『……銀さん、助けて…っ。』
高杉「心配しなくてもそのうち来るさ。」
『あ、貴方は…。ち、ちょっとここから出してください!』
部屋の奥から声が聞こえ、その方を見てみれば微かな光に当たり露になったのは高杉さんの姿だった。私は座っていた体勢から立ち上がり拳を握り肩を上げ訴えた。だが彼は何も言わずこちらへ近付いてくる。
高杉「もうじき出してやるさ。その時の光景がどんな物か楽しみだ。」
『ど、どういう事ですか?』
高杉「さぁな?例えアイツがここへ来ようともお前を差し出す気はサラサラ無いが。」
そう言って一気に距離を縮めて来たかと思えば、私の腰に手を回し顎を捕まれそのまま上へクイッと軽く上げられた。もしこの状況で相手が銀さんなら、私はきっと恥ずかしくて耐えられないと浮かれた事を考える。けど相手は銀さんじゃない。私はただ女としての恐怖を感じるだけだった。
『大して関わった事も無い相手にこんな事するなんて、随分遊んでるんですね。』
高杉「人を好きになるのに理由なんていらねぇだろ?」
私は今にも震えそうな身体を必死に抑えた。きっと怯えている事なんて悟られている。だけど何としてでもそれを表に出したくなくて平然を装った。