第21章 それぞれが負う傷
新八と神楽は銀時を挟むようにして横に並び走る。先程の声が届いていなかったのか銀時は何も言わずただ酷く慌てた様子で前だけを見て走っていた。そんな銀時に違和感を感じながらも再び声をかけた。
新八「ちょっと銀さんってば!!そんなに慌ててどこ行くんですか!!?」
神楽「聞いてんのか腐れ天パ!!!」
銀時「うるせぇー!!今お前の戯言に付き合ってる暇なんて無ぇんだよ腐れ酢昆布娘!!」
物凄い勢いで走りながらも何時ものやり取りは変わらず、変わっていたのは銀時の表情だった。新八はその切羽詰った様子を見て異変にいち早く気付き口を開いた。
新八「もしかして天音さんに何かあったんですか!?」
銀時「あったも何も、帰っても誰も居ねぇんだ、何も無い事祈るしか無ぇだろうが!」
銀時のその言葉に新八と神楽の顔は一気に青くなり視線を前に移し銀時に必死について行く。海へ向かうとだけ新八達に伝え、それ以降はただひたすら少しでも早く足を動かすことだけを考えた。三人のただ事じゃない表情と勢いに道行く人間が驚き道を開け振り返る。
だが次に道に現れたのは見回り中であろう土方と沖田の姿だった。凄まじい勢いで迫ってくる三人を見て何事だとは思ったが道を開けようとはせず、ただその場で眉を潜めて見ていた。
沖田「土方さん、なんかこっち向かってきますぜ。」
土方「おいテメェら!そんな走り方してたら周りに迷惑だ……」
銀時「邪魔なんだよどきやがれェェェェェ!!」
神楽「どけゴルァァァァァァァ!!!」
銀時は土方を、神楽は沖田を投げた押し無理矢理道を開けさせその場を突っ走っていった。