第21章 それぞれが負う傷
突然目の前に現れた河上によって銀時は逸る気持ちを堪えその場で立ち止まった。銀時を見てもたれ掛かっていた身体を戸から離し体勢を銀時に向け直した。その反動で銀時は腰から伸びる木刀へと手が伸びた。
河上「白夜叉、今主と剣を交える気は無い。あの女を探しているのござろう?」
銀時「てめぇ…天音を何処へやった…。」
銀時の木刀を握る手には自然と力が入った。このタイミングで河上が現れた事により高杉が関わっていることは確信し、鬼のような形相で睨みつけた。相変わらず河上は顔色を変えず怯むことも無く、静かに口を開いた。
河上「心配しなくても何もしていないでござるよ。」
銀時「あぁ。アイツに傷一つでも付けてみろ。ソイツの腕根こそぎぶった斬ってやらァ。」
河上「ふっ、そう来なくてはな。海へ行け。そこに居るでござる。」
銀時「どういうつもりだァ?自分でさらっといて居場所を言うたァ、何ともご親戚な誘拐犯だな。」
銀時は終始刀を離さず、天音の居場所を伝える河上に殺気を込めた笑みを向けた。河上はそれから口を開くこと無く銀時に背を向け万事屋を出ようとした。それにより銀時の怒りは更に煽られ、河上を押し退け家から飛び出していった。河上はその後ろ姿を階段の上から見ていた。
河上「女というのは罪でござるな。」
銀時は全速力で海を目指し走った。その途中で新八や神楽の姿を見つけたが何も言わず横を通り過ぎた。
新八「え、あれ!?銀さん!?何やってるんですか!!」
神楽「おいこの腐れ天パ!!天音ちゃんはどうしたアルか!!!」
銀時に直ぐに気付いた二人は走る銀時を追い掛け問いただした。