第21章 それぞれが負う傷
キョロキョロと辺りを見渡しながら居間へと足を運んだ。そこには誰も居るはずもなく、再び部屋中を見渡した後に天音の目に入ったのは机の上に置かれた一枚の紙切れだった。何だろうと思いそれを手にし、書かれている文に目を通した。
『な、なんだ…居ないのか……。』
一度は決心したものの、銀時が居ない事を知り少しホッとしていた。いざ銀時を目の前にすればきっと焦燥感に駆られると思ったからだ。だがいずれここに銀時は帰ってくる為、それまでにここで出来る限り心を落ち着かせようと決めた。
『…やっぱり、ここは落ち着く……。』
数日振りに帰ってきた家の中を見て、天音の心は落ち着かせるどころか自然と穏やかになっていた。誰も居ない一室でここに来た当時の事を振り返っていた。思い浮かぶのは新八や神楽、そして銀時との、決して多いとは言えないが天音にとっては大切な思い出ばかりだった。
『銀さん早く帰ってこないかな…何かもう、抑えられないや。』
考えれば考えるほど先程とは一転して、早く気持ちを伝えたいという衝動に駆られた。だがそんな都合良く銀時が帰ってくるはずも無く、する事のない天音は昼ご飯か夜ご飯かどちらになるか分からないが、ご飯を作ることにした。
『胃袋を掴め、か…。』
料理を作りながらお妙に言われた言葉を思い出していた。天音はこの時から、人並みでは無く得意だと、胸を張れるような料理を作れるようになりたいとそう思った。