第21章 それぞれが負う傷
『これでよしっと…。みんな仕事大変なのかな。』
暇を持て余していた天音は普段より更に気合いを入れ、手の込んだ料理を作ったため結構時間がかかっていた。だが作り終わっても銀時が帰ってくる事は無く、再び今から何をしようかと考えていた。
天音は台所から居間へ戻りソファーに腰を下ろした時だった。ガラガラと玄関が開けられる音が聞こえ、天音はその音に気づき身体が酷くびくついた。玄関と居間の間にある戸は閉められているため確認は出来ないが、銀時が帰ってきたと思えば先程まで正常に動いていた心臓は早さを増していった。
『やっ、やばい、どうしよう…。っ、ダメダメ、頑張れ私。』
戸を開けるため立ち上がるが、その足は緊張から小刻みに震えていた。それでも何とか体勢を保ち戸の前まで足を動かした。玄関から聞こえる足音も徐々に近づき、戸の前で止まった。天音は震える手でゆっくり戸を開けその向こう側を不安ながらも見据えた。
しかし、そこに居たのは銀時では無かった。
『あ、あなたは、この前の…。』
河上「数日振りでござるな。邪魔するでござる。」
戸の向こうに居たのは、この前高杉と共に船に乗っていた男だった。予想外の人物に、銀時では無いという喪失感よりも不信感を抱いた。
『何の用ですか?銀さんなら今は…』
河上「銀さんとやらには用はない。用があるのは主だ。」