第21章 それぞれが負う傷
新八は怪しまれないように席を外し、適当な紙に文字を綴っていく。書き終えた紙は懐へ仕舞い、完了した事を神楽に目で伝えた。そうこうしている間に銀時は立ち上がり二人に声を掛ける。
銀時「おーいお前ら、いくぞ〜。」
新八「はーい!」
神楽「定春行くアルよ〜!」
三人と一匹は揃って玄関の方へ向かい、それぞれが靴を履きつま先で地面を蹴る音が玄関に薄く響く。そして玄関の戸を閉めようとした時、新八は思い出したように装い声を上げた。
新八「あっ!すいません僕ちょっと忘れ物!二人は先に下に降りてて下さい、すぐに行くので!」
銀時「ったく何を忘れるんだよ。時間ねぇからさっさっとしろよぱっつぁん。」
神楽「10秒で降りてこいよダメガネ〜。」
いくら演技だとはいえ、どさくさに紛れて自分を貶す神楽に新八は何も言わずただ苦笑いで部屋の奥へと向かった。そして何も知らない銀時は神楽と定春と共に階段を降りる。
新八「ここに置いておけば分かるよね、天音さん早く仕事終わらせて銀さんを連れてきますから待ってて下さいね。」
新八は置き手紙を見つめて誰も居ない部屋で一人呟き、銀時達の所へと向かい万事屋を後にした。
静かな部屋に置かれた一枚の置き手紙にはこう書かれていた。
【天音さんへ。
急遽依頼が入って予定が狂ってしまいました。
なるべく早く仕事を終わらせて、それから僕と神楽ちゃんと定春は僕の家に向かって、ここに銀さんだけを帰らせます。
申し訳ないですがそれまでここで待っていてください。
新八・神楽より。】