第19章 男の嫉妬ほど見苦しいものは無い
抱き締められるのはもう何回目か分からないが、ここまで銀時の腕に力が入っているのは初めてで天音は動揺を隠さないでいた。
『ぎ、銀さん、ぐ、ぐるじい……』
そう伝えても力が緩む事はなく、むしろ強くなる一方だった。様子が可笑しい銀時を心配に思ったが、それよりもやはり思うように酸素を取り入れる事が出来ず苦しさに悶え、もう一度声を出し銀時に訴えた。
『ぎ、銀さんってば!ちょっと力が、苦しいです!』
銀時「っ!!…す、すまねぇ、大丈夫か?」
我に返ったのか銀時は直ぐに身体を離し天音に謝罪のと心配の言葉を掛けた。離れた瞬間に大量の酸素が肺にいきなり入ったためか、天音は少し咳き込む。何回か咳を繰り返すと顔を上げ銀時の方を見た。
『ごほっ…ホントにどうしちゃったんですか?銀さんいきなり様子おかしいですよ?』
銀時「本当。可笑しいよな…。」
『うあっ、ちょっと銀さんっ。』
銀時は自分で可笑しい事を認め、再び天音の身体を自分の胸へと引き寄せた。今度はちゃんと力加減をしており先程の様な息苦しさは無かったものの、本当にどうしてしまったのかと天音は本気で不安になった。
『大丈夫ですか?何かありました?』
銀時「…………会ったのか?」
『へ?誰ですか?』
銀時「……高杉と、会ったのか?」
いつもとは違い銀時の声は低く怒りと切なさで満ちていた。天音もそれは何となく察していたが、何故そんな風になっているのか今この瞬間は何も分からなかった。