第74章 長い夜
櫻井視点
白膠木様の白い浄衣が淡く光り始める。
それと同じく 和也の体も輝く
N「ぅ ぅ゛ ぁ」
和也の口から声がこぼれる。
桔梗{はじまったわね}
俺の肩に腰掛ける桔梗。
「ああ 俺は何もできない ただ見守るだけだよ」
桔梗{そうね 呪文字に迂闊に触れると穢れるわ}
和也の体からうごめく黒い文字が列をなし あふれ出る。
その文字列が白い浄衣に移り 黒く染まっていく。
(禍々しい この呪いは根深いなぁ…)
N「ぅ ぅ゛ ぁ」
和也の口から苦しむ声が零れ続く。
額に汗を搔きながら一心に経を唱える薬師殿。
白膠木様の浄衣の中でうごめく黒い文字
(がんばれ お前には 俺たちがいるぞ)
和也の体からあふれていた文字が途絶え 体から出ていた輝きの色が変わる。
白膠木{私のできる事をなしました}
真っ黒になった衣をスルリと脱ぎ捨てる。
薬師殿が合唱し頭を下げ、手を広げる。
脱ぎ棄てられた衣は球体になり、薬師殿の手を上に留まる。
桔梗{うまく終わったようね}
橋本さんがゆっくり俺たちの方に近づいてきた。
その手の上には椿様が乗っている。
椿{この穢れは わたくしが預かる。このまま消し去れば、呪文字を放った者の所在も処遇もままならない よいな}
「はい よろしくお願いします」
四十五度の礼をする。
椿{翔 もっと 頼ってこい 枝を使わずども 力になるぞ}
「お心 ありがとう ございます」
頭をあげ、橋本さんの掌に乗っている椿様に向かう。
「末席の僕が、あまり上位の皆様のお手を煩わせては なりません」
椿{翔のそうゆう所 謙虚さは良いが… まぁ今日は良しとするか
橋本}
椿様が持っていた扇子を部屋の隅に控えている女性に向ける。
橋本さんがゆっくりその女性に近づいていく。
(あの女性が椿様のお出かけ用の人?覚えておこう)
桔梗{あーゆう子 このみ?}
桔梗が茶化す。
「お前より美人だよ」
桔梗{ソコは私の方がでしょ}
俺の頬を蹴って椿様の方に飛んでいく桔梗。
頬を触りながら和也のベットに体を向ける。
橋本「櫻井さん、今の二宮さんは裸も同然 しばらくこの部屋に留まっていただけますか?」
「もちろん います 智くんとも約束しましたし」
(雅紀は智くんが守ってる 和也は俺が守る)