第69章 やっぱお着換え
櫻井視点
藤渕「松本来ますので 私はこれで」
運転席側にあるもう一つの扉から出ていく。
「はいはい」
途中になっていた着替えを再開する。
M「あれ 藤渕さんは?」
入ってきた潤は周りをキョロキョロしている。
「運転席の方に行った」
親指を立てる。
M「そうなの 俺の服これ?」
興味なさそうに盛り一つに潤が近づく。
「そうだよ」
適当に返事をしながら、さっきの御姫様の事を思い出す。
(我が一族は 御姫様の名を冠した一族
まさか 末席の僕の宴にお越しいただけるなんて 恐れ多い
お忍びとしてくれたのは 御姫様の優しさかな
女御の野本さんの判断かな
日本に帰ったら きちんとお礼に参らないと)
M「リーダーが来るまでに聞くけどさ」
潤が話しかけてきた。
(ん 智くんに聞かれちゃまずいことか?)
「なんだよ」
M「もぉ そんな声出さないでよ
怖いよ
俺が聞きたいのは どこまで リーダーに伝えるのかってことだよ」
背中を向けながら話す潤。
(ああ 和也の負傷のことか… 相手がわからないから…)
「“擂末の枝”の準備の事はタイミング取って伝えるつもり」
M「枝 使ったの?珍しい」
くるんと体を回転させ 俺の方を向く潤。
「素人が下手に器に干渉しない方がいいからね」
M「なるほどね」
着替えを進める潤。
(そう アレは俺の回復力では 追いつかない)
扉の方から外の風を感じた。
その風の中に智くんのいい匂いが混ざっている。
(あ!智くんだ!!)
音もなく智くんが部屋に入ってきた。
「智くんの服はこっちだよ」
一つ残った服の盛りに誘導する。
O「翔くんちょっと いい?」
俺の方を向いた智くんの目は笑ってなかった。
「はい」(なにか問題ですか!)
背筋を伸ばして智くんに向き合う。
O「和也の事だけど」
(シラフの時に和也呼びするときは、お怒りモードの時
まずは、自覚させ 心落ち着かさないと)
「あの 怒ってます?」
質問に質問で返す。
O「怒ってないけど」
俺から目を反らし口を尖らす。
(十分 怒ってますよ
それは 大事なニノを攻撃した相手に向けてと
それを後で知った自分にでしょ)