第67章 1日目 コンサート 退場
吉桜視点
S「バぁイ バぁイ」
嵐の五人で来てくれた観客に対して別れの挨拶をする。
スクリーンの下の階段が開き退場になる。
嵐の皆さんはヘリコプターで帰還。
僕は翔様の専属なんだけど、今晩は事務所の人を送迎警護も担っている。
専属なのに一緒に行動できないのが悔しいけど、僕は組織人なので、担っている仕事はきちんと、こなします。
大きなスクリーンに今日最後のアップが映されていく。
メンバー最後のアップは翔様。
(このアップは絶対見ていく!)
画面に現れたのは まさかのキス顔。
「きゃぁぁ♡」
翔様の背後に 夜の闇ではない墨色が見えた。
「しょぉぉぉうさぁぁxまぁぁああああ どうか ご無事で!!」
会場の歓声を背に蟲の垂衣(たれぎぬ)をかぶって走る。
どこをどう走ったのかわからないけど、嵐の五人の傍に来た時 五人はしっかり手を握って、両腕を上がっていた。
身体能力を高める用具でも、肝心の使用者がしょぼかったら息もあがる。
ハイテンションの「いぇぇぇぇい」の声と「ははは たのしかったね」と笑う翔様の声。
自分の体力の無さを痛感しながら、周りを見回す。
五人が楽しそうにヘリコプターに乗っていく。
現地スタッフたちも通常運転で作業している。
(よかった 何事もなかった)
ヘリが真っ直ぐ浮上。
ヘリの中から手を振る翔様が見えた。
「翔さぁまぁ」
こりゃ! の声と共に後頭部に鈍い痛みが走る。
「痛い 何するんですか!」
振り向くとその筋の方ような迫力の本郷さんが立っていた。
本郷「お゛前 生身の体で 起動中のヘリに近づいてどうすんだよ 怪我ぁどころか 事件になるだろ!
大事な主を 下僕が 迷惑かけるな! ボケェ」
「え ぁ スミマセン」
本郷「俺って変な感だけ いいんだよね もぉ」
頭を掻きながら、横に立つ。
本郷「ほら ちゃんと見送れよ」
ヘリは観客席の上を飛んでいる。
そのヘリの傍に狼神が並び飛ぶ。
‘ゆずれないよ 誰も じゃま できない
体中に 風を 集めて 巻き お こ せ
あらし あらし for dream’
観客の皆さんの合唱が会場を包んでいく。