第7章 ないしょ そう ナイショ
櫻井視点
~🎵~🎵~
軽快なメロディーが聴こえてきた。
(は!)
目の前に、俺を見ている智くんがいる。
(もしかして 見つめていた? ヤベー!!)
「コーヒーができたね」
自分の行動を隠すように、音の方に体を向ける。
O「そうだね」
智くんがゆっくり近づき横に並ぶ。
(あぁぁ しあわせー🎶)
脳内に煩悩丸出しの映像が広がる。
セピア色に着色された穏やかな朝
俺がコーヒーを キッチンで君が…
O「ニノのだよね」
智くんの口から俺以外の名前が出る。
(むぅぅぅ…なんでよぉ ココはまずは…)
自分の勝手なストーリーから外れてしまった智くんの発言に、悪態をつけたい俺を
(智くんは間違ってない!)
脳内俺が制する。
「そうだよ」
カップの七文目くらい入れて、冷静に返事をするが、脳内煩悩が継続している。
(別に このコーヒーの事じゃなくて…
せっかくの二人っきりなのに…違う男の…)
(もしもーし それはダメなやつ)
(宴で花貰ったんだから良いじゃん!)
(ダメなものは ダメ!! 彼女にバレたら ・・・)
(わぁーーー恐ろしい!!)
(脳内までは 彼女も見ないよ!!)
心の中の俺がドンドン増えて騒いでいる。
(あぁー 心ぉ おちつけーーー)
O「…翔くん」
いきなり智くんが肩を叩いて呼び掛けてきた。
「へ?」
間抜けな声を穿いて智くんの方を向くと
智くんが「なってる」と言った。
「え? なってる?」
言ってる意味が分からなくて復唱すると、
智くんが下の方を指さして眉を下げた。
(下?)
指された方に視線を向けると、下半身になる。
(ぎゃぁぁ・・煩悩が漏れてたぁ!!)
顔どころか身体中が熱くなる。
あわてて醜態を誤魔化そうとポケットに手を入れる。
そして、手にあたる硬いモノが震えている。
(ぁ? 震えてる?)
固い四角い物をポケットから出す。
O「じゃ、これ ニノに運んでおくね」
智くんが俺の側にあったマグカップを持ってキッチンを出て行こうとする。
「え?(持って行くの?)あ(コーヒーか…)うん」
『…ぉーしもし』
携帯から声が聞こえる。
「あ!はい!」
後ろ姿の智くんを見ながら、携帯からの声に反応する。