第9章 特別製の舞台
カメラ⑤視点
スタッフ「ドキメントのカット撮りしたいので、一度車に戻れますか?」
M「俺だけ?どんなのほしいの?」
スタッフ「コンサート会場に入る所を撮りたいです」
M「ん…わかった」
車から一人で歩いてステージに向かって上がる映像を撮り始める。
スタッフ「コンサートの構成や設備について、話してほしいです」
カメラを回しているスタッフが、映像構成の方向性を話し始める。
M「ナレーターとか入れないの?」
スタッフ「入れますが、なるべく嵐の声で説明を入れたいんです」
M「“自分たちで作ってる”を前面に押し出す感じ?」
スタッフ「はい」
M「別に、いつも通りなんだけどね…」
スタッフ「その『いつも通り』をファンに伝えたいんです」
M「…伝えたいかぁ…わかった。
そうなら話すよ。語るよ!編集よろしく!!」
松本はメインステージから中央ステージに向かって歩き出す。
スタッフ「松本さん花道の感想を聞きたいのですが?」
M「感想?まだ、準備段階だからね。
それに、俺だけがするコンサートじゃないし!」
スタッフ「嵐のコンサートですものね」
M「そうだね。
五人でいろんな所回って、15年前と今を重ねてきたんだけど…
なんかすごいね…」
スタッフ「重ねてみてどんな気分ですか?」
M「どんなって『嵐』が大きくなったと思った」
スタッフ「大きくなった?」
M「15年前は自分たち以外の所で、ドンドン話が進んでいく感じだったのに、
今回は『使い慣れた物がいい』って、言ったらさ…
『運ぶ』って話になって、
いやさ、ホントに持っちきたってつうのが…
すごいよ…」
スタッフ「これ全部日本から持って来たんですか?」
M「全部じゃないけど、部材でも、けっこう持ってきてるのは多い
リフターとか照明とか半分はそうだし…
色々、規制があるから、ロスから運んでる物の方が多いかも」
スタッフ「あれが、特設ステージですか?」
M「うーん、まだハマってないんだよなぁ…」
松本はサングラスを外して太陽の位置と腕時計で時間を確認する。