第110章 見送る者
桃木視点
『我々嵐は 人界で15年記念の演武を行います。
しばし、席を外し、準備をいたします。
お気持ちが向きましたら、器の我々の演武をご観覧ください。
では、失礼します』
翔が胸に手を当て頭を下げる。
大神の大きな尾が嵐の五人を包み込む。
(この特別な空間に心躍り、語り合うことを願ったものの…
強くかみ合っている 輪の中に入れぬ…もう 私は入れない)
{ 人界へ帰還 }
大神の宣言で五人が浮く。
ゆっくり器の待つ『人の世界』に帰っていく。
(悟……皆を守ってください
私たちでは、できなかった望みを あの五人なら…)
宮『まだ消えるな…』
宮様の泣きそうな声が聞こえる。
『宮さま…』
声の方を向くと、すでに涙が頬を流れていた。
宮『頼む…我(わ)の為に…』
先ほどより、一回り幼くなった宮様が小さい手を伸ばしてきた。
『宮様からの頼みとは…無下に出来ませんね』
そっとしゃがみ、抱き寄せ、抱き上げる。
宮『そうじゃぞ!!』
恥ずかしそうに、私の胸に頬を預ける宮様。
(まだ 温かい…)
『はいはい…わかりました。』
(私があなた様を、御止めできなかったのも、罪…)