第89章 俺の勝利はスルーなの？

相葉視点

「しょ！」で出した手の形は、チョキ２つとパー１つ


「やりぃ！」（勝ったぁ！）
高く腕を上げる。

Ｍ「オッシャ！勝った！」
　チョキを大事に包んで振る潤ちゃん。

Ｏ「えぇぇぇ～～　おいら負けたぁ」
　大ちゃんが悔しそうに口を大きく開ける。



「パー出すからだよぉ」
広げた大ちゃんの手をチョキで切るように挟んだ。

Ｏ「だってぇ」
　口を尖らした大ちゃんが俺の人差し指を掴んできた。


「やん」（捕まえないで！）
大ちゃんの手から指を引き抜くため、体をくるっと回転しさせた。



Ｎ「…ですね」
　カスの声が聞こえた。

声の方を向くと、翔ちゃんの顔を見て少しだけ肩が揺れしていた。

（あ！勝った報告しとこう）

「勝ったよ♪」
カズの側に行く。

Ｓ「おめでとう」
　翔ちゃんが笑顔を向けてきた。


「へへ　うん！」
大きくピースサインを見せて報告。

　翔ちゃんが目の前に手の甲をあてた。


（え？翔ちゃん？どうしたの？）

Ｎ「はいはい　じゃ、おじさんが挨拶ですね？」
　カズが俺と翔ちゃんの間を通って大ちゃんの方に行く。

（えぇ！俺の勝利へのコメントわぁ！）

Ｓ「お兄さん！」
　すぐに訂正が飛ばす翔ちゃん。


（翔ちゃん　ソレいつまで言うの？）


　カズは翔ちゃんの指摘をスルーして大ちゃんの方に近づく。



Ｓ「まったくもぉ　智くんをおじさん呼びするな」
　プリプリ膨れている翔ちゃんを横目で見ながら大ちゃんとカズの側に近づく。


Ｏ「おぅよ」
　堂々とパーの手をカズに見せる大ちゃん。

Ｎ「では、原稿です」
　俺の手帳を広げて手渡すカズ。


（もう出来てたのかぁ

　大ちゃんとカズは３つ違い
　中学ならかぶらない先輩なのに…最初の頃から対等に話していた。

　大ちゃんが心が広いのか？　カズがモノオジしないのか？

　どっちだろう…

　そういえば、俺はおじさんって呼ばれないなぁ…

　翔ちゃんも呼ばれてないなぁ


　俺は……アイバカ？　よく言われるなぁ…

　結構　傷つくんだけどねぇ…


　なのに　嫌いじゃないんよねぇ…



　こんな事言ったら　

『バカじゃない？いや　もはや　バカです！』

　的なこと　言われそうだから、言わないけど…）