第74章 心残りの塊たち
お菊(お嬢)視点
宮『お菊か…どうも、最近 心魂が定まらないのだ』
和寿様が顔を上げてくれない。
『今宵は 槿(ムクゲ)の花のお力で和也様を祝福されるのでしょ?』
そっと和寿様の手をとる。
(なんと 細くなられて…神域で、これほど消耗させていては… …
貴人のお二人にご心配をおかけする… なにか 良い方法が…)
宮『そう…そうで あった…』
ゆっくり顔をあげて立ち上がる和寿様。
(水干(すいかん)…そうだ お召し物を変え、お顔の色を変えよう!!)
『よろしいです♡
ではぁ 和寿様の御召し物もお着替えしましょうね♪』
(礼服(らいふく)より、かっちりした束帯(そくたい)の方がよろしいかしら…)
宮『いや この姿でよい』
立ち上がった和寿様は足元や腰元をはたいて、身なりを整える。
(また そのような事を…)
『いいえ いけません!!
高貴な男子(おのこ)が、水干のお姿で宴に参加するなど、恥ずかしいですよぉ
ささ この 束帯に着替えてくださいませ♪』
(今 着ている水干を脱がして お体を確認しないと)
水干の紐を持つ。
宮『かたぐるしいのは、イヤじゃ』
幼子のように抵抗する和寿様。
『良いのですか?桃木殿と御仁殿に笑われますよ?』
額が当たるほど顔を近づけ、微笑む。
(着替えなさい!)
宮『着替える』
少し身をすくめ、自ら脱ぎ始めた和寿様。
『お手伝いします!!』
たくさん衣替えの精霊の助けをかり、水干を脱がし、素肌を確認
白く玉の様な美しい肌が、煤け、黒ずんでいる。
(お体にまで…)
この煤けは、魂の終わりを告げる物
宮『お菊…』
和寿様が上目遣いで私を見る。
『はい!』
宮『寒い…』
下襲(したがさね)姿の和寿様が眉が下がる。
『申し訳ありません!!!』
慌てて単(ひとえ)を広げ肩に掛けた。
※下襲とは、着物の下着のこと。
※単とは、単物(ひとえもの)ともいい、裏地のつかない着物のこと