第70章 精霊からの祝福
大野視点
虹の精霊が、一番大きな聖なる岩の上に鎮座した。
次々煌びな衣を纏い{虹の精霊イーリスの祝福に追随する}の言葉と共に俺たちの頭や顔 体の一部を触れる“祝福”をする。
(精霊の祝福かぁ ちょっと新鮮…)
M「これなに?」
驚き、戸惑い身構える松潤。
(敏感だもんな…お前…)
S「大丈夫だよ、そんなに身構えるな」
ふふっと笑顔で声を掛けている翔くん。
(おいらの声より翔くんの方が安心するね)
N「人の子がそんなに珍しいですか…」
タキシードに合わせた髪形も見事にぐちゃくちゃになるほどの隅々まで触られながら『ふぅ』と小さく息をはいているニノ。
(くくっ 和也たら 嬉しい顔しちゃって)
{おおきゅうなった!}
“コレアモク”が豪快に相葉ちゃんを抱き上げる。
わ!っと口を開けて、足をバタバタさせている相葉ちゃん。
(おおスゴいな“コレアモク”鳥神までお越しなんだ…)
{マハーカーラの写し身よ}
背後から声が聞こえる。
《ここは宴の席 背後を取るのはどうかと思うよ》
表情を変えないように気を付けながら、声を返す。
{背後であるから、出来る話もある
残酷な破壊と穏やかな再生の力を持つタミールの血族につながるマハーカーラの写し身“人の子『智』”よ}
《だから おいらにその敬称は、不釣り合いだって言ってるよね?長いし…》
{吉祥者に近き魂魄が輪廻と共にある内はウツシミと呼ぶが道理}
《ああ もう 聞きたくない!!》
S「“人”への祝福だ。動かずじっとして…」
大きな花を背負った四つ足の精霊や、毛むくじゃらの二足の精霊に顔や頭をわしゃわしゃ撫ぜられて笑っている翔くん。
(潤が見てるから、抵抗なしか…触られるの…嫌な癖に…)
{アレが、今世の貴様のサティーか}
《そうだよ♡ おいらのだからね。手ぇ出すなよ》
後ろを振り向いて、俺と同じ顔のヤツと目を合わせる。
{そんなハイリスクを我々が冒すと思うか?}
ヤツの後ろに、ヤツと同じ顔が合わせ鏡のように並んでいる。
「ふふっ」
(思わないよ。
だっておいらは、もう そっちに帰るつもりはない)
祝福を終えた精霊は聖岩に戻って行く。