第16章 キミがいるから…僕も…
櫻井視点
「おまたせ!!」
部屋から出ると、目に飛び込んできたのは、吉桜が智くんの手を掴んでいた。
吉桜を睨みつける。
吉桜が手を離すと明らかにホッとした顔の智くん。
(お前。智くんになんかしたんだろ!!)
心の中で感情が高ぶる。
でも、ここでこの感情を表に出すと、智くんが困る。
「これが、俺の。こっちが大野さんの」
平常心を必死に保ちながら洗濯ネット二袋を吉桜に見せる。
吉桜「かしこまりました」
洗濯ネットを受け取る。
「洗濯できても、持ってくるなよ」
声が低くなった気がしたけど、気にしない。
(早く。智くんに確認しないと…)
吉桜「明日の朝お持ちします。今日はごゆっくりお休みください」
吉桜が二袋を持って去っていた。
吉桜の姿が見えなくなったのを確認してから、ずっと気になっていた智くんの手の赤さを指摘した。
「智くん…手どうしたの?」
O「ん、さっきね。吉桜くんと握手したんだ」
智くんが掌をヒラヒラ振る。
O「あの子握力あるね!途中から手が痛くなりそうだった…」
智くんのニュアンスがいつもと違う。
「変な事言わなかった?」
少し手の後が残った智くんの手をそっと包み込み、智くんの目を見る。
O「俺のダンス大好きって言ってくれた」
「だけ?」
O「うん。握手と『なんて呼んでいいか』って聞かれたから『好きに呼んで』って…」
(嘘を言ってる目じゃない…)
「吉桜は、なんて呼ぶって?」
ゆっくり次の言葉を言う。
O「普通に『大野さん』って呼ぶって…なにか問題かな?」
智くんが不安そうな声で聞いてきた。
「ううん。問題ない♡」
(貴方が嫌な思いをしてないならいいんです。もう嫌なだけです
ケガさせたわけじゃないけど…俺が唯一出来る事…)
智くんの手を数回撫ぜて『Heal』をかける。
「さー。雅紀の部屋に言って晩御飯とビールで乾杯しよう」
大きく声を上げる歩き出した。
O「冷えたビール飲みたいね!」
智くんが笑顔で近づいて来る。
「ねー♡」
その笑顔をみて俺も笑顔になった。