第16章 キミがいるから…僕も…
櫻井視点
智くんの部屋の前に立つ。
在室のランプがついている。
(カードちゃんと入れてる…)
在室を示す淡いオレンジ光にホッとする。
コン コンコン
小さくノックをしてみた。
(返事がない…)
ドアノブを少し動かす。
(開いている…)
「智くん?……」
遠慮がちに、声を掛けるが返事がない。
「智くん入るよ…」
ドアストパーをしていないから、部屋にすんなり入れそう。
(もう!いつも言っているのに…
智くんは、無防備なんだ!無防備過ぎる…
俺達のこと信じてくれてるのは、嬉しいけど…
『襲ってね』…て言われてるみたいで、ちょっと心配だよ)
一歩智くんの部屋に入った時。
{襲うの?}と頭の後の方から質問が飛んできた。
「襲わないよ!」
ソク返事と声の方に手を振り上げる。
(誰だよ!)
振り上げた所には誰もいない。
ハッと自分の行動に動揺する。
廊下に出て周りに誰もいない事を確認する。
「あぶねぇ…変な人になる所だった…、閉めよ」
ブツブツ言いながら、そっと部屋に入る。
部屋の中は間接照明が優しくあしもとを照らしている。
メイン電気を付けて部屋が明るくする。
部屋を見回す、ホテルだから、間取りはだいたい同じ。
でも、智くんのにおいがする。
胸がドキドキする。
(もう。俺ってバカか…)
額と頬を手のひらでパンパンと叩く。
「智く~ん?どこぉ?」
(今は、安否確認。そして、確保。連行の手順だな)
何処でも寝れる体質の智くん。
眠っていたら、起すのが大変だから、ほぼ『連行』の形をとってきた。
(夜ご飯 食べなくても寝れるってすごいよ。俺無理だし…)
ベッドに着替えるつもりの服(洗濯済)が無造作にあるのを発見。
(シャワー中?…)
バスルームの前で、音を聴く。
(…じゃ、無さそうだな…)
「智くん?開けるよ」
バスルームに入る。
(濡れてない…まだ未使用だな…)
目でアメニティを確認していく。
親指と人差し指で顎をもち、
人差し指で頬を滑らしながら、もう一度部屋を確認する。
カーテンがゆっくり動いている。
(ベランダ!!)
あわててベランダに向かう。