【イケメン戦国】 戦国武将へのサプライズ<R18>
第9章 ~家康~
女中頭「家康様」
その声にはっと顔を上げる。
文机に頬杖をつき、いつの間にかうたた寝をしてしまっていたらしい。
外を見れば、とうに日が暮れていた。
女中頭「家康様・・・夕餉の支度が整いました」
僅かに開かれた襖の隙間から、声だけが届く。
女中頭「本日はなお様のお部屋にご用意いたしましたので、そちらへお越しください」
それだけ告げ、襖が閉じられる。
一つ息をついて立ち上がると、なおの部屋へと向かった。
家康「入るよ」
用意された膳の前ではなく、部屋の隅で座っていたなおが顔を上げる。
「家康・・・」
笑顔はなく、どこか張り詰めたような表情だった。
なおの前まで歩み寄り、腰を下ろした。
家康「あんたの言いたいことはわかるけど」
「えっ」
なおが僅かに目を見開き、身構える。
家康「ああいうことは今までもよくあったし、これから先もきっと・・・」
「あ、 あぁ、 そっちか・・・」
家康「は?」
ほっとした様子のなおが、姿勢を正して家康を見つめる。
「正直、驚いたというか、ショック・・・衝撃? ああいうところ、初めて見たから」
家康「そうだろうね」
「でも、考えてみたら当たり前と言うか、それが普通なんだよね」
膝の上で拳を握り、
「大丈夫、家康が誰か他の人を選んでも、私が家康の事好きって事には変わりないから」
無理矢理の笑顔を見せた。
家康「なお・・・」
なおが固く握りしめた手を、家康の掌が上から優しく包む。
家康「あんたといる時の俺は、武将でもなんでもなく、なおを愛する、ただの男」
両手を広げて見せると、
家康「俺の体は一つしかないし、腕は二本しかない。抱き締められるのはせいぜい一人だと思うけど」
無表情のまま、
家康「おいで」
家康の胸にそっと頬を寄せ、腕を回してみる。
暖かくて、力強くて、あつらえたように身体がぴったりと合わさる。
胸の奥につかえているものが、じわじわと溶かされるような感覚。
家康「なお・・・」
顎に指を添え、なおの顔を上向けると、そっと唇を寄せる。
「・・・っ」
家康の肩に手をかけ、なおがそれを拒んだ。