【イケメン戦国】 戦国武将へのサプライズ<R18>
第9章 ~家康~
侍医が門から外へ出ると、
家康「どうしたの」
城から戻った家康に声を掛けられる。
侍医「これはこれは、家康様・・・お帰りなさいませ」
深々と頭を下げ、
侍医「なお様の体調がよろしくないと伺い、診させていただきました」
家康「え、医者を呼ぶほど良くないの?」
侍医「念の為。ですが、身体には特に悪いところはございません」
家康「薬は?」
侍医「それより、今はお体を休めていただくことが一番かと・・・」
帰って行く侍医の背中を暫く見つめた後、慌ててなおの部屋へ向かった。
女中頭「家康様」
家康「何、またあんたなの?」
女中頭「はい、また私でございます」
家康の元へ歩み寄ると、
女中頭「なお様が、後で家康様とお話がしたいと。ただ、今はまだご気分が悪いとのことで、お呼びするまでどうかお待ちください」
家康「いい加減にしろ」
それだけ言うと、家康は踵を返す。
女中頭「家康様のせいだというのに・・・」
廊下に出された膳を下げる。暫く前に彼女が運び入れたなおへの食事は、殆ど手付かずだった。
屋敷の裏へまわり、繁みをかき分け、中庭へと向かう。
門番のように立ちはだかる女中頭を回避するため、家康は庭に面した通路からなおの部屋に入り込む作戦を思いつく。
植え込みを跨ぎ、庭へ出た、その時だった。
ガサ・・・・・
音のする方に瞬時に体を向け、刀を抜こうと柄に手を伸ばす。
家康「・・・わさび」
茂みから現れた、一頭の鹿。
家康「脅かすなよ」
わさび「・・・」
まん丸のつぶらな瞳と、暫く見詰め合う。
家康「そこを退け」
わさび「・・・」
なおの部屋の方へ、一歩踏み出した時だった。
家康「痛っ!」
頭から思い切り体当たりをしてくる。
家康「お前もなおを慕ってるってわけ?」
わさび「・・・」
暫し睨みあいが続き、少しでも動けば飛び掛かろうとする鹿の妨害に、庭からなおの部屋へ入る計画は断念せざるを得なかった。