【イケメン戦国】 戦国武将へのサプライズ<R18>
第8章 ~謙信~
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『謙信様』
ああ、この夢を見るのは久々だな。
何度も見た景色に、何度も見た女の姿。
夢か現か分からぬほど、鮮やかな夢。
『謙信様』
俺はいつも通り、女に歩み寄り、その手を取るのだ。
声のする方に振り返るが、
謙信『・・・』
霧がかかった様に目の前はぼやけ、何故か俺はその姿を探すことさえせず、立ち尽くす。
忘れてしまったわけではない。
深く愛し、そして叶わなかった記憶。
全てを失った夜、込み上げるものを飲み込むように見上げた空には、俺を嘲笑うかのように無数の星が瞬いていた。
何故、いつものように鮮明に浮かばないのだろう。
『謙信様』
ああ、そうか。
この声は、違う。
あの日の夢を見なくなったのは、俺に笑いかけるこの女が傍にいるようになってからだ。
今、俺を呼ぶのは・・・
謙信『なお』
伸ばした手に、柔らかな温かさが触れる。
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「謙信様」
目を開けると、上から覗き込むなおの顔があった。
謙信「・・・なお」
繋がれた手に気付く。
「あっ、すみません・・・謙信様が手を伸ばしたので、つい・・・」
引っ込めようとするなおの手を、強く握り直す。
「え・・・っ」
謙信「このままでいろ」
顔を背けて照れるなおの指に、指を絡ませた。