第2章 悪人
すると突然
彼のスマホが鳴りだしたのだ
彼はテレビを気にしながらスマホを耳にあてた
横山「はい、もしもし・・・」
私は少し、ため息をついた
別に泥棒するわけではないが
この軽い考えに納得がいかなかったのだ
彼の電話の会話を聞かないように
テレビの方に視線を向けていた
横山「今からか?
まぁ、ええけど・・・
わかった待って
直ぐに行くわ」
彼はその言葉で電話を切ったのだ
そして私を見ると
立ち上がりながら静かに言ったのだ
横山「俺、今から飲みに行ってくるから
寝るなり好きにしててな」
その言葉を残して
玄関に向かう彼の後を私は追いながら
「あのぉ、いいんですか?
本当に?」
私の言葉に彼の足が止まり
そして私に少し冷たい目つきで
横山「なにがや?」
その言葉に怒っていると感じたが
私は彼に聞いてみた
「私が転がり込んで来たら
家族の方に迷惑じゃないですか?
家族の方はまだ、知らないし・・・・」
その私の言葉に彼は小さく笑い
横山「何を言ってるん?
俺は一人暮らしやから
迷惑はかからんで」
一人でこんなに
いい部屋に住んでいる事を知り
私の動揺は大きくなった
そんな私を見て彼は更に言ったのだ
横山「もし、悪人やっても
あそこで死なれるよりは
よっぽど後味はええから
気にすんなって」
それだけ言うと
私のおでこを軽く指で押し
彼は黙って家を出て行ったのだ
この、私を助けてくれた
けったいな男の人を
私は何とも言えない気持ちで見送っていた
かなりの善人なのか?
それとも、おひとよしなのか?
私の心を複雑な感情が支配し始めたのだ