第11章 涙
彼は私の言葉に
何も言わずにビールを見つめていた
「馬鹿ですよね・・・
何でそんな事をしたのか・・・」
私はおつまみを
彼の前に置きながら
自分の心を吐き出すかのように語ると
彼は寂しそうな瞳で私を見た
「いまさら、過去を見ても
一緒だったのに・・・・」
すると彼がやっと口を開いた
横山「そんな事ないやろ?・・・・」
彼の否定の言葉に私は驚いた
彼はゆっくりと自分の考えを話しだした
横山「人は時には
過去を見んと
先に進めん事もあるし・・・」
彼は私の行動を認めてくれた事が
何よりも嬉しく感じ
「こんなヤツでも
先に進めるんですかね・・・・」
私は今日の自分を思って呟いた
その呟きに彼は答えるように
横山「ちゃんと進めるよ・・・・」
言いながら私の頭を優しく撫でたのだ
その瞬間に
私の目から涙が溢れ出した
私は慌てって涙を拭いながら
「私、結婚を決めていた人が
いたんですが・・・
他に彼女が出来て・・・・」
私はかすれた声になっていた
横山「・・・・そっか」
彼は私の心を察するように
返事をする
それに安心して
私は言葉を続けた
「未練たらたらで
本当に馬鹿ですよね・・・」
彼は静かに首を振っていた
そんな彼を見ながら
自分の心を吐き出したのだ
「今日、偶然に彼を見てしまって
そしてら、私に向けた事のない
笑顔で、その人を見てて・・・・」
私はそれ以上
言葉が詰って話せなくなり
俯きながら涙を流し続けた
すると彼は突然
強く私を抱きしめたのだ
その事に驚いている私の耳元で
横山「好きなだけ泣いたらええ
好きなだけ泣け
それから前に進んだらええから・・・・」
そう私に優しく言いながら
彼は私を強く抱きしめ続けたのだった
私は彼の温もりを感じながら
涙を流し続けたのだ
今までの過去を洗い流すように
彼の優しさに甘えて泣き続けたのだった