第5章 運命の瞬間
それから、数ヶ月が経過した。
マフィアの中ではまだまだ下っ端のくるみには、いわゆる「雑用」と呼ばれる仕事が山積みとなっており、芥川と太宰の訓練を見学する事は、時間的にも許されなくなっていた。
(たまに時間が空くと、驚くくらいのスピードで中原がやって来、銃の指導をしてくれたのだった。)
「まぁ、そんなに心配することもないだろう。」
一緒に仕事をすることの多い織田作は、いつもそう云う。
太宰との付き合いの長い彼が云うのであれば…と、最近はくるみも心配することが減っていた。
今日も「組織の構成員と街の高校生が起こしたいざこざについて、学生の学校と穏便な対策を練る」という大役を果たす予定だった。
「織田作さん、そろそろ行きますか??」
くるみが声をかけると、織田作が気まずそうに目をそらした。
「それがな、今日は首領に呼ばれていて、今から向かわなければならないんだ…」
「え?!何やったんですか?!」
「何かした覚えはないのだが…」
もしかしたら処理されるかもな、と笑う織田作にくるみは叫んだ。
「私も行きます!!」