第5章 キミのために出来る事全て（東堂尽八＊夢）完結

『靖友〜〜！東堂抜いちゃえ〜！』

声援に混じって
布施の声が耳に響く
今はレースでなく練習中だ
荒北に負ける事なんかあり得ない
それなのに毎日毎日
オレを無視して荒北を応援してる

「うっせ！面倒くせぇ事
言うなバァカ！」

とか悪態つきながらも
満更でもない荒北の顔が
やけに勘にさわる

抜かさせない！大勢のファン
そして布施の前で
恰好悪い所なんか
見せてたまるか！

「ちょ…！東堂飛ばし過ぎだろ！」　

「お前が遅いんだろう？
オレは負けんよ」

荒北をちぎって校門を抜けると
ファンの女の子が群がってくる

ほら！見たか布施！
お前もコレでオレの
恰好良さに気付いただろう！？
布施の姿を探す

「荒北？布施は？」

「姫凪？知らね〜」

なんだと！？またしても空振りか！

「オマエ…姫凪に
なんかしたのォ？
避けられ過ぎ」

「オレが女子の嫌がる事を
すると思うか！？」

【皆のアイドル東堂】だ！
皆に平等に接しているに決まってる

「それにしては懐かないねぇ…」

うっ…痛いところをつくな！
コレでも傷ついているんだ

「今にオレに夢中にさせてやる！」

精一杯虚勢を張り
その場を後にしたものの
大きなため息が漏れる

寮に帰ろうと校門をくぐると
同じく女子寮に帰る所だった
布施を見つけ駆け寄る

「布施！寮まで一緒に帰らないか？」

『帰らない』　

「そんなにイヤか？」　

『変な噂立つのが嫌なの。
じゃ、私コンビニ寄って帰るから。
バイバイ』

去っていく小さな背中を
思わず追いかける