第52章 初恋苦し（北信介）完結

せやし
この子もきっと
焦ってさっきみたいな
百面相を見せ…て

『塩せんべい？！
メッチャ好きです！
えぇ、どないしょ
行こうかな…』

「え？来んのか？
いや、俺はエエけども…」

俺が百面相してもうてるがな

塩せんべいにそんな絶大な力あるとか
知らへんかった

『あ、イキナリお邪魔したら
お婆さんにご迷惑ですよね』

「婆ちゃんは突然の訪問者には
慣れとるよ
ウチのバレー部の奴ら
週三は突然来よるしな

せやなくて
布施はエエんか？
その…俺の家来るん…」

って、まるでさっきの
アランみたいになってる俺に

「お婆さんも居はるし
塩せんべい食べたいし
なにより
北さんは安心出来ますもん」

可愛い顔して
グサッと来る事を
ニコニコしながら言うて来る布施

さっきオロオロしてくれたんは
ホンマ単なる偶然で
布施にとっての俺の
存在は空気の様なモンなんやろな

…はぁ。
冷静に分析してまう
自分がイヤやな…