第52章 初恋苦し（北信介）完結

なぁ、どないしたら
オマエは俺を意識してくれるんやろな
こればっかりは
練習するわけにいかんし
どないもならんのやろか？

『北さん、どないしたんです？』

「なんもあらへん
寒なって来たし
早よ行こう」

『あ！ちょっとだけ
付き合ってください
さすがに手ぶらで
上がり込むわけにはいかないので』

"別にエエ"と言うても
"気持ちやから"と
一切引かず

お茶っ葉がエエか
甘いお菓子がエエかと
目をキラキラさせて
アチコチの店を覗く布施

その小さな背中を追いながら
みるみるイッパイになる
買い物袋に言葉を失って行く

「お、おい…
うちの婆ちゃんは
そない大食いやないで…」

やっと絞り出した俺の声に
ハッと肩を揺らし

『…すいません…
なんかテンション上がってもうて…
あの、余ったら近所に配ったり
稲荷崎のメンバー来た時にでも
お茶請けで出してください…』

手の中の量に顔を赤くして
俯く布施

ホンマなんて可愛らしい子なんやろ