第8章 tragic love①
ー松岡sideー
「はぁ…くそ」
午前3時。
何度目だろう。寝返りを打つのは。
俺は耐えきれずにベッドを降りキッチンへと向かった。
グラスを取り、水を一杯一気に口に流し込んだ。
「ふぅ…」
………眠れない原因は分かってる。
『松岡さんが好き…大好きです…だからキスして…』
翔の言葉が頭から離れない。
一瞬我を忘れ、あいつを抱き締めてしまった。
あの瞬間まで…分からなかった。
けれど…あいつの言葉で俺も気付いてしまった。
翔…俺もお前が好きだ。
「………駄目だ…何考えてんだ」
まだ子供じゃないか…。
俺より10も下の…しかも少年を…。
でも…頭では分かってても…こんなに心があいつを求めてしまった。理屈じゃないんだ。
ホストクラブなんて辞めさせたい。
女だけじゃない。
男の客だって沢山居る。
あんな場所に翔が居れば…いくらボーイだって目を付けられるに決まってる。
あいつは良い意味でも悪い意味でも目立つんだ。
早く別の仕事を見つけてやる事。
それが俺が今翔にしてやれる事だ。
今の俺にはそれしか思い浮かばなかった。
もしこの時…素直に自分の想いを翔に伝えていれば…あんな事は…起きなかったのだろうか。